TSSS2019

B-4 アラスカの官民連携モデルに学ぶ ~サステナビリティがシーフードのブランドに与える影響~

B-4 アラスカの官民連携モデルに学ぶ ~サステナビリティがシーフードのブランドに与える影響~

 

SNS等を含む様々なPR活動を通じて世界に情報発信

サステナビリティは地球と漁業の未来にとって重要な概念だが、それだけで消費者に対して十分な訴求力があるわけではない。そんな中、海外では様々な形で、サステナブル・シーフードのブランド力を高める取組みが行われている。アラスカ産シーフードの販売促進を担う官民連携組織、アラスカシーフードマーケティング協会(ASMI:Alaska Seafood Marketing Institute)の活動もその1つ。本セッションではスーザン・マークス氏が登壇し、ASMIの取組みを紹介した。

米国アラスカ州が、独自にRFM(Responsible Fisheries Management:責任ある漁業管理)認証プログラムを発足させたのは2011年。現在は、7漁業に対してRFM認証が与えられている。では、なぜアラスカ州は独自の認証プログラムを作ったのか。それは「アラスカ産シーフードの価値を高めるために、アラスカが原産地であることを知らしめる必要があった」から、とマークス氏は言う。

RFMのような独自の認証プログラムを持つ地域は、アラスカだけではない。ノルウェー、アイスランド、デンマークの他、日本にもMELという認証プログラムが存在する。「認証に選択肢があることは大変重要だ。MSC・ASCというグローバルな認証プログラムの他にも、地域に根差した認証プログラムがあることを知って欲しい」とマークス氏は訴えた。

アラスカにおけるサステナビリティの取組みは、同地が米国で49番目の州となった1959年に遡る。州憲法に水産資源の持続可能な活用が謳われ、貴重な自然資源を保護するための取組みが何世代にもわたって続けられてきた。「アラスカにとってサステナビリティは大変重要であり、世界市場への扉を開いてくれるものでもある」とマークス氏。ASMIは官民連携型のシーフードマーケティング組織の先駆けでもあり、数十年にわたり世界中でアラスカシーフードの価値向上のための活動を続けている。

 

「消費者にアピールするためには、サステナビリティに関するメッセージのみならず、『肌によい』『消化器系によい』といった機能的栄養成分の情報も加える必要がある」とマークス氏。こうした認識に基づき、オピニオンリーダーやブロガー、インフルエンサーに対して、デジタルも含めた様々な手法による情報発信を強化。2019年はラグビーワールドカップにも参加する選手の所属する英国ラグビーチームと連携し、アラスカシーフードを使用したレシピを開発するなどPR活動を展開した。こうした取組みが功を奏して、アラスカ産サーモンは、フィットネス好適食材として世界的名声を得るに至った。今後も「アラスカ産シーフード=健康によい」というメッセージを、他の魚種にも広げていく計画だという。

また、日本では、2018年に「カニカマを食べると健康増進作用があり、筋力アップにつながる」という研究成果が発表されると、アラスカ産カニカマの売上が急伸。こうした実績を背景に、「筋肉強化」や「健康寿命の延伸」を消費者に訴求することで、アラスカ産シーフードの拡販につなげたい考えだ。

「私たちが伝えたいメッセージは極めてシンプルで、『アラスカのシーフードは持続可能で、質が高く栄養もある』ということに尽きる。口コミやSNS、有名人など、様々なルートを活用してコミュニケーションを強化し、消費を増やしていきたい」とマークス氏は語った。

 

 

アラスカ産シーフードの魅力は持続可能性と安定性

次に登壇したのは、アラスカ産シーフードの輸入販売を手がける日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)の松本哲氏。日本生協連では1960年代から「環境に優しい洗剤」の販売に取組み、2007年には持続可能な認証水産物を使った商品の販売をスタートさせた。とはいうものの、「なかなか認知が広がらず、販促に苦労した」と松本氏。近年、持続可能な認証水産物取扱い魚種も増え、以前と比べればプロモーションはしやすくなったものの、「資源の枯渇を訴えるだけでは、『じゃあ、魚ではなく肉を食べればいいんでしょ』ということになってしまう。サステナビリティと健康・栄養の両面から、消費者に訴求することが非常に重要」と語った。

現在、日本生協連の水産部門のコープ商品(PB)の1割はアラスカ産の原料を使用。アラスカ産が一定割合を占める理由について、「生協の宅配で重要なのは、お客様の注文に対して欠品を起こさないことと、リピートオーダーがあること。その意味で、持続可能性と調達・品質の安定性を兼ねそなえたアラスカ産シーフードは、我々の事業にマッチするところがあった」と松本氏は評価。「2030年までにSDGsの目標を達成することを目指して、今後もサステナブル・シーフードの販売に努めていきたい」と抱負を語った。

さらに、マークス氏と松本氏の講演を受けて、ファシリテーターの家形氏も「漁業の持続可能性を大上段から唱えるだけでは、消費者から選んでもらうことはできない」と指摘。「様々な工夫をしながら、Good for planet, good for you.(地球にもいい、あなたにもいい)というメッセージを発信するよう心掛けていきたい」と決意を述べた。

 

 

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