TSSS2019

B-3 認証水産物を通じてのエシカル消費とSDGsへの貢献

B-3 認証水産物を通じてのエシカル消費とSDGsへの貢献

 

サステナブル認証取得がもたらす経済的メリット

近年、持続可能な水産物の調達を実現するため、MSCなどの国際認証を有効活用する動きが広がりつつある。消費の最前線で、国際認証はどのように活用され、今後どのように広がっていくのか。本セッションでは、大手小売業3社とMSC(海洋管理協議会)による報告が行われた。

MSC認証とは、MSCの厳正な規格に適合した漁業、企業にのみ与えられる認証である。現在は「MSC漁業認証」と「CoC認証」の2つがあり、前者は持続可能な漁業であることを認証するもの、後者はサプライチェーンの全過程で、認証/非認証の水産物を確実に区別することとトレーサビリティの確保を担保するものである。「認証を取得することによって、サステナブルな食品を求めるマーケットへのアクセスが確保され、その需要を高めることによって経済的メリットが得られる」と、MSCの石井氏はその意義を語る。

 

 

認証品導入のきっかけは「ESG投資への対応」 

今回登壇したのは、MSCと認証品を取り扱う大手3社。セッション冒頭では、各社が自社の取組みについて報告を行った。セブン&アイ ホールディングスでは、2050年までの達成目標の1つに「持続可能な調達」を掲げ、生物多様性や人権、サプライチェーンなどの観点から取組みを行っている。現在、プライベートブランドのセブンプレミアムではMSC認証の辛子明太子や、フェアトレード認証のカカオを使用した「キュービックチョコ」を販売中。認証品の取扱いを始めたのは「ESG投資への対応」がきっかけ、と尾崎氏は語る。

日本マクドナルドもまた、「持続可能な食材の調達」を重要課題として挙げている。昨年8月には、MSC認証を取得した白身魚を使用したフィレオフィッシュの販売を開始。他にも、紙製品やコーヒー原料、フライオイルなど、様々な物品に国際認証を取得したものを採用している。その理由の1つに、岩井氏は「未来顧客の獲得と未来雇用への寄与」を挙げた。「今、小中学校でSDGsを学んでいる子供たちは、いずれ認証品を選び、社会に貢献している企業に就職したいと思うようになる」と岩井氏。今後、国際認証は「選ばれる企業」になるためのキーとなる、との見方を示した。

 

 

就活学生も企業のSDGs対応を注視

一方、インターネットの世界で認証への取組みを牽引するのが楽天だ。同社は昨年、7つの国際認証を取得した商品を集めたショッピングモール「EARTH MALL(アースモール)with Rakuten」を開設した。「インターネットショッピングが重要性を増す中、持続可能な商品の存在は避けて通れない」と眞々部氏。「学生はSDGsへの取組みに注目しており、就職先の企業を選択する理由にもなっている」と語り、採用面でのメリットについて指摘した。

だが、食の調達における国際認証の普及に向けた取組みは、まだ始まったばかり。消費者にも十分認知されているとはいいがたいのが実情だ。認証品を導入したものの、「残念ながらお客様からの反応は薄い」と語るのはセブン&アイの尾崎氏。「お客様の商品選びのポイントは、依然として品質や価格、健康が中心。サステナビリティも商品の選定理由となるよう、認証の意義をもっとアピールする必要がある」と語った。

同じように、楽天の眞々部氏も、国際認証に対する一般の認知度の低さを指摘する。「『認証があるから買う』という人はまだ少ない。とはいえ、エコラベルは、購入した商品のストーリーを深く知るための入り口となりうる。『あなたが買った商品はサステナブルなんですよ』とお伝えすることが大切」と、地道なPR活動の大切さを語る。

 

 

エシカル消費はブルーオーシャン戦略

一方、認証を取得する過程でも、様々な関門が待ち受ける。「フィレオフィッシュでMSC認証を取得した時は、監査の方が厨房まで入り、『調理中に落としたり、間違えて別のものを作ったりしたときは、どう管理しているのか』『認証を取得していない食材が混じったものを販売することはないか』など、審査は詳細に及んだ」と語るのはマクドナルドの岩井氏。「営業も巻き込み、全社挙げてMSC認証を取得した」と、その苦労を振り返った。

今後、各社は国際認証とどう向き合いながらビジネスを展開していくのか。「企業にとって、エシカル消費はいわばブルーオーシャン戦略であり、未来顧客・未来雇用の方々を引き寄せる作用がある」と岩井氏。「Z世代に支持されないと、我々は生き残れない。いずれ認証ラベルの商品を消費者が選ぶ時代が来れば、事業コストは投資に変わる」と、尾崎氏も期待を込める。「一般の消費者を巻き込むためには、『意識は高いが、敷居は低い』という状態を作ることが大切」。そのためにもコミュニケーションを徹底し、サステナブルな商品が持つストーリー性を伝えていきたい、と眞々部氏は抱負を述べた。最後にファシリテーター役の山口真奈美氏が、「気候変動の影響も大きくなり、我々は重要なターニングポイントを迎えている。今こそエシカル消費を本気で実践していく時」と語り、本セッションを締めくくった。

 

 

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