開催報告⑤ | 東京サステナブルシーフード・シンポジウム 2018

開催報告⑤

東京サステナブルシーフードシンポジウム2018 開催報告⑤

分科会:Room A

東京サステナブルシーフードシンポジウム開催報告第5回はRoom Aで行われた分科会についてご紹介いたします。インドネシアと日本のNGO、企業、大学が目指す持続的なうなぎ産業 (A-1)、日本初の社食へのサステナブル・シーフード提供を行う企業同士の連携(A-2)、生産者と小売とで推進する日本の漁業・養殖業の育成(A-3)と多様なステークホルダーがそれぞれの方法で水産業の持続可能性を広げようとしています。

A-1: 日本企業が拓くうなぎ産業の未来

山内 愛子
WWFジャパン 自然保護室 海洋水産グループ長

「絶滅危惧種であるウナギについての相談を多く受けるが特効薬のようなものは我々も知りませんとお答えするしかない状態。ただ、ビカーラのように今は深刻ではないがこの先危険な状態になるかもしれないと言われている魚種に対して、どういうふうに我々NGOも早めに手を打つことができるのかを考えるきっかけとして始めた。」

海部 健三
中央大学法学部 准教授

「今、世界中を探しても、持続可能だと言えるウナギはない。日本の場合でもニホンウナギで、トレーサブルだと証明できるウナギを見つけることは非常に難しく、消費者にとってもどのような商品を選べば持続的な利用を応援できるのかがわからないというのがこれまでの状態だった。今回のプロジェクトの意味は、「客観的で国際的な基準に従っているもの」という選択肢を示されたことだと思っている。」

ジョン・スタント
株式会社イロハ・シダ・インドネシア うなぎ事業副代表

「我々の目標は、自然の中でのウナギのサステナビリティを維持していくということ。このまま我々がビカーラを獲り続ければ、ヨーロッパウナギと同じような状況になるのではないかと懸念した。そこで天然ウナギの持続可能性のためになる活動として2013年に放流を始め、2017年からは今回のプログラムでFIP/AIPを実施している。」

山本 泰幸
イオンリテール株式会社 グループ商品本部 グループ商品戦略部 マネージャー

「ビカーラの資源状態については検証を進めているが、現在のレベルであれば我々一企業および今日集まっている関係者のできる範囲で、きちっと商品を通して最終消費者の不安を解消できるような実績を上げていく。」

ファリッズ・リザル・ファフリ
WWFインドネシア 漁業担当オフィサー

「ビカーラは需要が高く産業的に見て価値が高いため、シラスウナギ漁業管理、養鰻業両方の改善を目指し(FIP、AIP)管理ガイドラインを作ろうということになった。漁業者に対するガイドラインを提供し、ASC、MSC取得をサポートしている。それから、政府の規制、協調という点にも焦点を当てている。FIP、AIPには、業界が使っているシラスウナギのデータが資源量把握、漁獲量の決定のためにも非常に大事。資源量は流通経路でのコミュニケーションも含めデータの取り方に課題があるが長期的に見ていく必要がある。」

リリ・ウィドド
インドネシア海洋漁業省

「ウナギの持続可能性に関しては、ジャワ島南部での管理計画の策定、放流、淡水域と海域に分けての漁業統計などがなされているがシラスウナギの採捕についての規制はまだなく、あるのはインドネシア外に輸出する場合は150g以上のものだけとする規則のみ。しかし国としてウナギの保全の行動計画について現在協議中であり、来年からシラスウナギの管理SOPなどを始められるのではないかと期待している。」

A-2: 社員食堂に広がるサステナブルシーフード

松井 大輔
シーフードレガシー 企画営業部 統括部長

「今年に入って、社員食堂へのサステナブルシーフードの導入が急速に広がっており、具体的な課題や導入のステップが分かる先進事例も多くある。オリンピックやSDGsの目標達成に向けて是非、各企業、給食会社、専門機関で連携して導入を検討していければと思う。」

喜納 厚介
パナソニック株式会社 CSR・社会文化部 事業推進課 課長

「パナソニックは30年に渡って、オリンピックのワールドワイドに公式パートナーをさせていただいているので、まさにレガシーづくりに貢献しないといけない立場にいるのかなと思う。社員食堂へのサステナブルシーフード導入は、あくまでもスタートだと考えている。より多くの企業の社員食堂で導入が進むように連携し、今後も取り組みを加速していきたい。」

柴田 豪
エームサービス株式会社 品質統括センター 仕入・物流管理室 室長

「SDGsの項目に対して、我々は今回のサステナブル・シーフードの取り組みは、12番「つくる責任つかう責任」、14番「海の豊かさを 守ろう」というようなところに寄与していこうと考えている。現場だけではなく、本社でもメニュー開発をして水平展開という形も考えている。」

米今 和也
株式会社グリーンハウス 商品本部 グループ食材推進部 副部長

「当社の経営理念として「人に喜ばれてこそ会社は発展する」があり、そのなかで4つの信条「お客様、働く仲間、地域社会、地域環境」がある。ESG、SDGsとも深く関わっておりサステナブルシーフードについて、経営理念の具現化の重要な取り組みとして、進めていきたい。」

A-3: 漁業/養殖業の改善で起業を支援

村上 春二
オーシャン・アウトカムズ 日本支部長

「売る、買う、獲る、すべての方々が魚がなければビジネスが存続しないんだという共通認識を元に、やれることからやっていく。これが漁業/養殖改善プロジェクトなのかなと思う。資源が良くなって、ビジネスも良くなっていくという構図で進めていきたいと思っている。」

和間 久美恵
合同会社 西友 企業コミュニケーション部バイス・プレジデント

「漁業/養殖改善プロジェクトに携わる事で、生産者の話を直接聞ける事、社内の様々な関連部署を巻き込み、理解や意識の向上ができていることは大きなメリットと感じている。現在、サポートをさせていただいている、AIP銀鮭、FIPビンチョウマグロの販売をしっかりと継続し、西友の売れ筋商品にしていくことが大切だと思っているので、今後も継続して取り組んでいきたい。」

脇口 光太郎
株式会社ヤマサ𦚰口水産 代表取締役

「FIPを進める上で、自分たち一人ではとてもハードルが高いが、専門機関やマーケットの応援のおかげで取り組みができている。消費者には、漁業改善に取り組んでいる姿勢も買う選択肢の一つに選んでいただければありがたいと願っている。」

クリスティン・シャーウッド
FishChoice プログラムディレクター

「FIPのコンセプトは東南アジア、オセアニア、北米で拡大しており、現在グローバルで110のFIPがある。より多くの企業が、FIPの水産物を調達するとコミットしており、自分たちの会社の中で調達方針を作って、FIPを調達しようということを明示しているところが増えている。Fishery Progress .orgを参考にして、FIPを皆様の調達先の1つとして、検討いただければと思っている。」

鈴木 真悟
株式会社マルキン

「AIPという形で新しい技術、異業種が入ってこれるような仕組みを作ることによって、養殖業をより良い産業にできるんじゃないかと思う。天然の水産物と違って、人がちゃんと管理してやれるかどうかというところに限られているので、責任のある養殖漁業を目標に掲げて活動している。」

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