開催報告⑦ | 東京サステナブルシーフード・シンポジウム 2018

開催報告⑦

東京サステナブルシーフードシンポジウム2018 開催報告⑦

分科会:Room C

東京サステナブルシーフードシンポジウム開催報告第7回はRoom Cで行われた分科会についてご紹介いたします。
世界では持続可能な水産物であることを示すために、認証ラベルやレーティングなど様々な方法やツールが開発されています。C-1ではそのうちの一つで日本でも徐々に広がりつつある水産認証エコラベルの紹介と今後について、C-2ではレーティングやFIP/AIPなどが紹介されました。このように世界で一つの共通基準を設け水産物を持続可能にしていこうとするのを阻んでいる要素の1つがIUU漁業です。C-3ではその対策に取り組む国内外の専門家からの提言がなされました。

C-1: 認証エコラベル商品の調達を増やす

Global Sustainable Seafood Initiative (GSSI) マネージングディレクター
ハーマン・ヴィッセ

「日本では想像しにくいかもしれませんが、世界では約150もの水産エコラベルが乱立しています。GSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)は、FAOのガイドラインが示す基準を満たしている水産エコラベルを承認するプログラム。水産エコラベルはGSSIに承認されることを目指すことで、サステナビリティやレスポンシビリティの面での信頼性の担保と改善を図ることができます。今では70以上の企業と10以上の国際機関やNGOと協働し、これまでに7つのスキームを承認しました。」

MSC(海洋管理協議会)日本事務所プログラム・ディレクター
石井 幸造

「MSC認証は信頼性の高い制度として世界各地で認知されており、漁業認証は世界で359漁業、年間960万トンに達し、世界の天然魚の漁獲量の12%を占めている。またCoC認証は世界で4,000を超える企業が取得。日本でも200弱の企業がCoC認証を取得しており、現在はイオン、日本生活協同組合連合会、コープデリ連合会、IKEA、ライフ、マルエツ、ベイシア、コストコ、オイシックス・ラ・大地、セブン&アイ・ホールディングスなどでMSC商品を購入することができる。MSCはグローバルスキームとして世界で初めてGSSIから承認を受けた認証制度。申請してから承認されるまで、審査に要する情報の提供、要求された事項の改定、多くのコメントへの対応など、18ヶ月間のタフなプロセスを経た。」

水産養殖管理協議会(ASCジャパン)ジェネラルマネージャー
山本 光治

「ASC認証はわかりやすく言えばMSCの養殖版で、世界中で認知されている養殖認証制度。私たちが日本に活動拠点を持ったのは2017年だが、すでに国内のASC承認済みの養殖場の数は世界4位に成長し、また新たにスズキ・タイの基準もできて、今後国内展開はますます活発になってくる。ASCは養殖認証の中で最高得点でGSSIに承認されている。GSSI承認というベンチマークも重要だがそれに加えそれぞれのスキームの特徴や仕組みの違いをもっと知っていただければと思っている。」

グローバル・アクアカルチャー・アライアンス(GAA)アジア・ビジネス・デベロップメント・ディレクター
ジェーン・ビ

「グローバル・アクアカルチャー・アライアンス(GAA)が運営するベスト・アクアカルチャー・アライアンス(BAP)認証は、食品安全、環境に対する持続可能性、従業員の労働環境、アニマルウェルフェア(動物福祉)の4つを担保する包括的な養殖エコラベル。GSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)だけでなく、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)やGSCP(世界社会コンプライアンプログラム)にも承認されている。BAPは孵化場、飼料工場、養殖場、加工工場の4段階を網羅しており、アメリカで最も知名度のある養殖エコラベルだ。3匹の魚が円を描くロゴが目印で、ラベル料金が無料なのがビジネスフレンドリーな点。」

アラスカシーフードマーケティング協会(ASMI)サステナビリティ・サーティフィケーション・アドバイザー
スーザン・マークス

「MSCやASC, BAPが国やエリアを限定しないプログラムであるのに対し、アラスカの責任ある漁業管理(RFM)認証プログラムはアラスカの漁業を認証する「リージョナル」スキーム。アラスカは世界でも最大の水産物輸出エリアであり、日本はアラスカの水産物にとって非常に重要なマーケット。アラスカの多くの漁業はRFMとMSC両方の認証を受けているが、これらの認証の大きな違いは、MSCはロゴ使用料が発生し、RFMはCoC認証を受ければ無料で利用できるという点。RFMロゴの使用によりサステイナビリティのみならずアラスカという原産地をもアピールすることが可能になる。アラスカの漁業は過漁獲や環境破壊、汚染のないようしっかり管理されており、アラスカ州は憲法にそれが明文化されいる唯一の州。アラスカの漁業管理は、世界中からサステイナビリティの成功例とみなされている。」

C-2: 多様に広がるサステナブル・シーフード・イニシアティブ

セイラーズフォーザシー日本支局 理事長
井植 美奈子

「Blue Seafood Guideは日本唯一の水産物レーティングプログラムです。資源状況が好ましくないものを食べてはいけない、とするのではなく、より環境に優しい選択をすることで負担なく水産資源を次世代に残していくことを目的としています。」

Seafood Watch シニア・プログラム・マネージャー
ライアン・ビゲロウ

「認証水産物は世界中の20%の漁業をカバーするまでに成長しました。レーティングは残りの80%の漁業に関する情報を企業や消費者に提供します。欧米ではサステナビリティーは市場の基本要件として多くの企業がNGOなどの専門組織とパートナーシップを結んでいます。」

Sustainable Fisheries Partnership(SFP) グローバル・ツナ・ディレクター
トム・ピケレル

「企業が資源状況が好ましくない漁業から調達していることが判明しても、調達を直ちに中止しましょう、とはアドバイスしません。企業は購買力とこれまでの関係性を生かし、FIPやAIPを通して漁業(養殖業)の改善を支援することができるからです。」

ノーパック・フィッシャリーズ・エクスポート社 代表取締役
トーマス・ジェームス・クラフト

「水産業の持続可能性は環境だけでなく社会面にも大きく影響します。企業が持続可能性に関する取り組みを開始するにあたり重要なのは、現場でどのようなことが起こっているかを理解することです。私たちは電子トレーサビリティを導入することで、持続可能な漁業を行う生産者のストーリーを顧客に伝えることでサプライヤーとしてマーケットでの需要を勝ち得てきました。」

C-3: 違法漁業撲滅とトレーサビリティ確保

ザ・ネイチャー・コンサーバンシー 海洋政策ディレクター
マルタ・マレーロ・マルティン

「政府の関与なしにはIUU漁業の撲滅とトレーサビリティの確立は困難です。日本に輸入される水産物の約30%でIUU漁業への関与の可能性がある、とのレポートが報告されていますが、政府レベルでの協働、ビジネスレベルでの協働を強化していくことで世界第3の輸入市場である日本のマーケットが改善していくことが期待される。」

WWFジャパン シーフード・マーケット・マネージャー
三沢 行弘

「国際規模での協働や規制とルールの整備が整わない状況が続くと、IUU漁業の抜け道ができてしまう。日本の企業もトレーサビリティの重要性に関しては理解しているが1社だけでは対応できる問題ではない。多くのステークホルダーが集まり、議論を重ねることはもちろん、規制の強化も重要になってくる。」

FishWise トレーサビリティ部門シニア・プロジェクト・マネジャー
トレーシー・リンダー

「米国では政府が輸入水産物に関するレギュレーションを導入したことにより、企業がリスクの高い水産物に対してリスクアセスメントを行うようになった。トレーサビリティはIUU漁業撲滅に向けたツールであって解決策そのものではないが、より多くの企業や政府がトレーサビリティを導入することで水産市場をよりクリーンなものにすることができる。」

食品需給研究センター
酒井 純

「日本にはEUやアメリカのようなトレーサビリティの法律が存在しない。ガイドラインなど任意のルールはあるが、その中で1つの企業が複雑なサプライチェーン上で情報収集を行うことは非常に難しい。より多くの企業にトレーサビリティの重要性を把握してもらい、統一したルールの導入、サプライチェーンを通しての情報共有ができれば国産水産物の輸出も活発化するだろう。」

IUU漁業対策フォーラム事務局
小谷野 祥浩

「IUU漁業由来の水産物が国内マーケットに流通することで、規則を守り漁業を行う企業や漁業者に対する経済損失は大きい。輸入水産物に限らず、国産の水産物でも密漁などが問題になっている。それを防ぐためにもトレーサビリティの確立が重要となってくる。」

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