開催報告④ | 東京サステナブルシーフード・シンポジウム 2018

開催報告④

東京サステナブルシーフードシンポジウム2018 ~開催報告4〜

分科会:メインホール

 

開催報告4回目の今回は、メインホールで行われた3つの分科会についてご紹介いたします。世界のトップ水産企業により構成される海洋管理のためのイニシアチブ「SeaBOS」からの報告、IoT技術と養殖とのコラボレーションの可能性、ESG投資における水産物の重要性についての意見が交わされました!

M-1: 「水産業界で始まった持続可能性のコミットメント」

 

ストックホルム大学地球環境科学部門ストックホルム・レジリアンス・センター
副サイエンス・ディレクター ヘンリック・オスターブロム

「SeaBOSに参加する10社は世界の水産業を変える力を持っている。そして水産業だけでなくSDGsの実現に関してもビジネスのリーダーとなる存在です。この変革のスピードを加速させるためには企業間のパートナーシップと協働が欠かせません。日本の企業はコミットメントに対して忠実です。今後の展開に期待します。」

日本水産株式会社 養殖事業推進部 部長 屋葺 利也 氏

「SeaBOSへの参加だけでなく、GSSIやGDSTなどの国際的なプラットフォームにも積極的に参加するようになった。ニッスイグループの取り扱い水産物450魚種、160万トンの水産物の資源調査を1年半かけて行った。結果88%は安心して提供できるものだと判明した。30%においては認証取得済みの水産物だ。今後、情報不足で測定ができなかった水産物に関して情報収集ができるように各機関に協力を呼びかけていきたい。2030年までには全ての水産物において持続可能性が担保できるように取り組みを進めていく。」

マルハニチロ株式会社 経営企画部サステナビリティ推進グループ 課長代理 佐藤 寛之 氏

「SeaBOSに参加することが、企業の持続可能性に関する中期長期ビジョンの策定に繋がった。最大手の水産企業として他の企業に与える影響を考慮し、経済価値、社会価値、環境価値を3つの柱としてSDGsの実現を目指していく。SeaBOSに参加する10社がリーダーシップをとり、他の企業にもポジティブな影響が与えられればイニシアチブの成功と言えると思う。」

ウォルトンファミリー財団 環境部門 プログラムオフィサー
テレサ・イッシュ 氏

「SeaBOSは競合企業が協働する、という画期的な取り組みです。こうしたビジネスリーダーがイニシアチブを取ることで世界の水産業界、そして水産資源管理に関するポリシーにも影響を与えることができます。持続可能性が特別なことでない、ということが早く定着するように問題を追求し続けて欲しい。」

 

M-2:「IoTと新技術が作るサステナブルな新市場と漁業の課題解決」

日経ESG編集 シニアエディター/ 日経ESG経営フォーラム プロデューサー 藤田 香

「漁業の生産を支える現場というのは高齢化、人口減少、人材不足など課題に直面している。そうした課題をAI、IoTなどいわゆるスマート漁業として解決することが広がっている。このセッションが、水産業や水産業ではない分野からの来場者とのつながり作りのきっかけになればと思っている。」

株式会社NTTドコモ 地域協創・ICT推進室 担当課長 山本 圭一 氏

「海の状態をセンサーで計測し、クラウドにアップロード、漁業者がそのデータをアプリで見られるようにした。自らで計測していた手間が省け、さらにノリ生産者の場合は生産量や品質が向上した。このように今まで見えなかったものが見えるようになったことで新たな気づき、イノベーションが生まれるのではないかと考えている。」

KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部地方創生支援室 マネージャー
福嶋 正義 氏

「定置網内の魚の量の推定技術、サバの給餌記録と環境測定の組み合わせによる因果関係の測定システム、クロマグロの養殖場の赤潮対策ができる様な技術を生産者、大学などと共同で開発している。これからもそれぞれの技術を向上させ、通信事業者という立場にある私たちから通信事業のコスト面などで貢献したいと思っている。」

ウミトロン株式会社 代表取締役
藤原 謙 氏

「水産養殖が可能な面積は現在の水産物消費量の100倍と言われており、水産業が今世紀最も重要な産業だと見ている。私たちは餌やりの最適化のための管理分析ツールを開発しているが、IoT技術と、大規模効率化、分散管理などデータと管理が関係する水産養殖技術は親和性が高いと感じている。そのコストを抑えるのもITやIoT技術の得意とするところ。将来的には養殖向けの保険データサービスも構築したい。」

日本電気株式会社 デジタルプラットフォーム事業部 マネージャー
早坂 真美子 氏

「養殖場では計測は人の手で1尾ずつ行われているため誤差が大きく、サンプル数も限られている。その結果出荷の際に重要な生簀内の魚の重量などが正確に推定できていなかった。そこでNECではステレオカメラの映像を元に養殖魚のサイズを自動的に計測できるようなソリューションを開発。魚体を傷つけずに正確に測定できるようになった。今後はより多くのデータを集め、サイズだけでなく養殖業の先鋭化に貢献したい。」

株式会社IHIジェットサービス 衛星情報サービス部 取締役兼部長
川邊 有恒 氏

「カナダのexactEarth社のAIS(船舶位置情報)を利用した事業を行なっている。これにより小型漁船の操業場所もリアルタイムでわかるようになり、データメッセージの中に漁獲情報も入れられる。さらにブロックチェーンと組み合わせることで漁獲場所から食卓までのトレーサビリティを高められる。トレーサビリティが高まれば魚の価値が上がる。多少高くても安全なものを買うことで漁業者の収入が安定的になり、後継者も増えていくのではないかと期待している。」

 

M-3: シーフードにESG投資を呼び込め

日経ESG編集 シニアエディター、日経ESG経営フォーラム プロデューサー
藤田 香 氏

「企業に対しCO2発生量などの環境への影響を開示を求めるプロジェクトを運営する英NPO・CDPは気候変動、次に水、それから森、次が魚ではないかと言っている。ESG投資家の目がだんだん気候変動だけでなく自然資本のほうに向き始めている。今回の議論を踏まえてまた事業会社、投資家の間で意見交換、ステークホルダーリビングラボに繋げていただければと思う。」

株式会社大和総研 調査本部主席研究員
河口 真理子 氏

「ESG投資家が企業に求めることは情報開示、網羅性があってマテリアリティが明確に分かる自社情報、サプライチェーン全体での取り組み。英NPO・Fish Tracker Initiativeが出した企業の過剰漁獲リスクについての報告書では対象228社のうち日本企業が40社。つまり日本企業は1番インパクトを受けるということになる。水産資源の3割は過剰漁獲状態で非常にリスクがあることに日本の投資家も気付き始めている。情報開示は経営的にも大事だと判断したら即実行、宣言し、その後にプロセスを固めるスタイルに変えるのが日本企業が出遅れないためには必要。」

高崎経済大学 経済学部 教授
水口 剛 氏

「ESG投資の背景には、ESGという要因が個々の企業にとってのリスクになるという考え方、地球のサステナビリティを守ることが投資家にとっても利益になるという2つの考え方があると思う。特に水産におけるリスクは、乱獲、養殖では餌となる魚の過剰漁獲、抗生物質が考えられる。海外ではスーパーなどに対しても魚種、漁獲場所、漁場の数などの開示を求める動きがある。つまり投資家の視点は今後スーパーマーケットや外食産業や食品会社、サプライチェーン全体に向かい、非上場水産企業もこの影響を必ず受けるようになる。」

日本水産株式会社 取締役 常務執行役員 CFO(最高財務責任者)
山本 晋也 氏

「中長期計画に持続可能性を取り入れた当初はコスト的に無駄ではないかという雰囲気だったが、社外取締役からのリスクの可能性の指摘、マグロに対する一般市民やメディアの関心、海外展開している現地社長からの賛成意見に後押しされた。現在もSDGsへの取り組み方、何がマテリアリティなのかを整理したり、SeaBOSなどに参加している。情報開示についてはまだ内容整理が必要だが活動内容を包み隠さずタイムリーに発信できるようにしていきたい。」

味の素株式会社 広報部 ダイレクトコミュニケーショングループ長 CSR統括
長谷川 泰伸 氏

「投資家と会話するには我々の持っている非財務のKPIを数値化することが必要、できればそれを金銭価値で評価するのが重要ではないかと思い、商品のライフサイクルや各事業で生じるCO2発生量と水の環境負荷を全部USドルに換算した。その結果自然環境のインパクト、我々が生み出す社会的価値、経済的価値のインパクトをお金という見える形で投資家に説明できるようになった。社会改善度、人の幸せや健康度も含めて、全体的に評価できるような体系ができないかと思っている。」

次回は分科会(Room A)についてご報告いたします!

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