開催報告② | 東京サステナブルシーフード・シンポジウム 2018

開催報告②

11月1日に日経ESGとシーフードレガシー主催によりイイノホール で開催された「2018東京サステナブルシーフード・シンポジウム〜魚から考える日本の挑戦〜」。国内外から65名の登壇者と600名強の来場者が集まる中、3つのトークセッション、5つの基調講演、12のパネルディスカッションが繰り広げられ、大盛況のうちに幕を閉じることができました。ご登壇者の皆様、ご来場者の皆様、スポンサーの皆様、そして運営関係者の皆様、有難うございました!

午前の部の前半は、外務省地球規模課題審議官大使の鈴木秀生氏、環境省事務次官の森本英香氏、水産庁長官の長谷成人氏、ウォルトンファミリー財団エグゼクティブ・ディレクターのカイル・ピーターソン氏、上海ディズニーリゾート料理長のアラン・オリアル氏による基調講演が行われました。

基調講演のレポートはこちらから:開催報告①

今回のブログでは、午前の部の後半に行われた二つのトークセッション、「水産物のトレーサビリティと社会問題」と「2020年に向け日本の魚を考える」でのご登壇者方からのメッセージをご紹介します。

トークセッション1「水産物のトレーサビリティと社会問題」

 

労働権利推進ネットワーク基金 ディレクター
パティマ・タンプチャヤクル氏

「東南アジアの水産業界に蔓延る人身売買や違法漁業を無くすために、インドネシア政府やAP通信等と活動を展開し、移民漁業者約3000人を国に戻すことに成功した。その中には20年以上も国に帰れない方もいた。また国に帰れず亡くなられた方、未だ行方不明の方、自国に帰られてからも社会復帰のためにリハビリが必要な方も多くもいる。ぜひ皆様も手を貸してほしい、問題を共に解決しましょう。」

 

フィッシュワイズ 代表取締役
トバイアス・アギーレ氏

「国際的な水産サプライチェーンには、乱獲による水産資源の減少に伴うコストダウンを行うために移民労働に依存し、強制的で劣悪な労働条件を作り出してる一面があり、この問題には多くの小売企業も知らぬ間に間接的に関わっている。例えば米国2,400店舗を展開するセーフウェイ社は、マルチステークホルダーと協働しての改善を公約として掲げている。日本でもこのシンポジウムをきっかけに、問題解決への具体的協働が始まることを願う。」

 

シーフードレガシー代表取締役
花岡 和佳男

「今年7月に発表された国別のSDGs達成ランキングでは、日本は昨年の11位から今年は15位へと順位を落とした。『目標12: つくる責任つかう責任』『目標14: 海の豊かさを守ろう』『目標17: パートナーシップで目標を達成しよう』等の得点が低かったことが原因と指摘されている。日本でサステナブルシーフード・ムーブメントを主流化させていくことは、まさにこの3つの目標を達成する具体的道筋である。」

トークセッション2「2020年に向け日本の魚を考える」

 
 

豊洲マグロ仲卸「鈴与」3代目店主
シーフードスマート代表理事
生田 與克氏

「私の本業のマグロは明らかに減っている。シャケもスルメイカも獲れなくなっている。もっと世間の皆様も食への意識を変えていかなければいけない。豊洲の移転騒ぎの際もそうだったが、メディアの国民に与える影響は大きい、この問題の本質を真面目に取り上げて欲しい。また、『絶滅危惧種だけど美味しい』に行ってしまう状況下、『サステナブル=美味しい』と言い切れる形を作るのが、いま企業に求められている分野ではないか。」

 
 

北京、ロンドン オリンピック バドミントン日本代表
フライシュマン・ヒラード・ジャパン シニアコンサルタント FHスポーツ&エンターテーメント事業部
池田 信太郎氏

「SDGsへの関心も高まり、リテラシーの高い企業はあるが、水産物の認証ラベルはまだまだコンシューマーに十分に認知されていない。2020東京オリパラを通しての啓蒙啓発が大切。オリパラは世界の誰もが知っているスポーツの祭典であり、そのバリューや認知度は極めて高い。オリパラのど真ん中に近い場所にいる人間として、中から啓蒙啓発をしていきたい。」

 

脳科学者、作家、ブロードキャスター
茂木 健一郎氏

「せっかく日本食が世界で注目されているのに、肝心の日本人がダイバーシティやエコロジカルシステムに関する感覚や思考や知識や経験が低い。ただ懐石料理で一品一品異なる由来を持つ器を使うなど、元々日本にはダイバーシティもサステナビリティも存在している。それがどこかで途切れている。東京オリパラは日本のそういう部分を世界に知ってもらうチャンス。だからもうちょっと本気でやろう。」

 

日経ESG編集 シニアエディター/日経ESG経営フォーラム プロデューサー
藤田 香氏

「保存手段としての干物や塩ジャケもそうだし、成魚しか出さない富山の寒ブリ宣言もそう、サステナブルの考え方は日本の漁師文化にも昔から根付いている。それと最近のサステナブルシーフードというワードとをどう繋げていくのか。その二つは分断されているものではない。IoTやAIなども含めて、新たな知恵も絞って、企業も消費者も巻き込んで社会全体で一つの大きな形を作らなくては。」

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