TSSS2019

C-6 うなぎ資源と和食文化を守る

C-6 うなぎ資源と和食文化を守る

日本の食文化に欠かせないウナギが減り続けている。しかし、基礎研究も途上の魚種で、持続可能な利用の道筋は不明瞭だ。本セッションでは官民産学の各方面からウナギの現状を概観し、未来に残す方策を議論した。

 

 

まだ資源評価ができない魚種

櫻井正和氏(水産庁 増殖推進部 栽培養殖課 内水面漁業振興室長)は、水産庁が公開している資料「ウナギをめぐる状況と対策について」の要点を紹介し、「ウナギはよく分かっていない魚。科学的評価に基づき資源管理できるアジやサバやイワシとは違う。水産庁が自ら予防原則を掲げて管理しているのはウナギだけだ」と述べた。国や都道府県は、養鰻と稚魚のシラスウナギ採捕に分けて許可漁業者の利用上限を定め、川では産卵に向かう成魚の獲り控えを呼びかけている。

シラスの採捕量と池入れ量のギャップについて櫻井氏は、「差が全て密漁とは限らない。未報告が多いと思われる。構造的な問題だ」と説明した。ウナギ保全には環境省や国土交通省も協力しており、石倉かごの設置や川での基礎調査、人工種苗の開発などを進めている。

 

 

環境の劣化もウナギ減少の大きな要因

中央大学法学部准教授で同大学のウナギ保全研究ユニット長を務める海部氏は、養殖ウナギも野生の稚魚(シラス)から育てるため「すべて天然資源に頼っている」と強調した。そして、シラスの採捕量が上限の半量にも満たない池入れ制限に明確な効果はなく、ウナギが一生の約9割を過ごす河川の環境が劣化しているため、消費をゼロにしてもウナギが減り続ける可能性はあると述べた。その上で、「利用速度を落とし、再生産を加速すれば、ウナギの持続的な利用は可能だろう」との見解を示し、適切な漁業管理と生息域の環境改善に向けた幅広い議論の必要性を説いた。

海部氏はネオニコチノイド系殺虫剤によって餌生物が減ってウナギが減少したとする産業技術総合研究所らの宍道湖での研究にも触れ、減ったのは漁獲量で実際の資源量は不明だが、農薬の影響は要検討だと述べた。

 

 

漁獲証明制度の導入を

WWFジャパン自然保護室海洋水産グループの滝本氏は「ウナギを一切食べないでとは言わないが保護と利用の両立を図る必要がある」と語った。ヨーロッパウナギやアメリカウナギ、ニホンウナギなどは、漁獲の減少傾向や生息域減少など国際自然保護連合(IUCN)の判断基準に則って絶滅危惧種に指定されている。日本は消費量が減ったとはいえ今もウナギの重要な消費国であり、シラスを香港からも輸入している。しかし、香港にシラスの生産拠点はなく、実質どこのシラスか末端では分からない。滝本氏は「輸入自体は合法だが、シラスの由来を調べる術がない。日本市場におけるIUU(違法・無規制・無報告)漁業リスクであり、漁獲証明制度の導入が必要」と述べた。その他、求められる対策として、全国統一のシラス採捕ルール、蒲焼き提供店などでのシラス原産地表示、年間消費量の40%を一気に消費する土用丑の日の慣習の見直し、トレーサビリティーを支える適正価格での販売などを挙げた。

 

 

ウナギと共に歩む地域

鹿児島の5つの養鰻場で年間800トンのウナギを生産する山田水産は、無投薬の養殖でオーガニック認証を取得している。節水・節電・省力化が可能なタンク式の養殖池を取り入れ、炭火蒲焼きの「職人の仕事を機械化した」80メートルの加工ラインや、トンネル型の蒸し器、凍結・パック設備などを備え、150人の従業員とその家族をウナギで養っている。

代表取締役専務の山田氏は元ラガーマンで、「日の丸を背負って闘うアスリートに日本産のウナギを」という思いから、食アスリート協会の協力を得て、選手たちに無償で蒲焼きを提供する活動を続けている。

また、同社は2019年に水産研究教育機構から預かった150匹の人工ウナギを蒲焼きに仕上げ、記者会見を開いた。山田氏は「かなり取材を受け、ウナギに対する皆さんの期待に大きな使命感を感じた。悲観していては前に進めない。従来こういうことは国や研究者がやるだろうと考えていたが、きちんと関わって、日本のウナギが続く世の中にしていきたい」と語った。

 

 

会場からも活発な発言

ファシリテーターの山内氏は、客席のゲスト2名にコメントを求めた。IUCNのウナギ専門家グループ座長のマシュー・ゴロック氏は、「多様な主体間の対話に加え、各ステークホルダー内部の対話も重要だ。また、持続可能性の問題の解決には、需要の実態を理解する必要がある」と述べた。続いて、東京・八重洲の鰻屋の職人が、「専門店同士でウナギ資源に対するスタンスを共有できていないのが課題だ。お客様を目の前にしている商売なので、堂々とウナギを取り扱っていきたい。周りの知恵を借りて、できることからやっていく」と述べた。

満席の会場からも挙手が相次ぎ、トレーサビリティーに関する質問には、海部氏が「マグロのような大きな魚と違いシラス1匹の由来を問うのはハードルが高過ぎるけれど、イオンの浜名湖産のウナギのようにモデルとなる地域単位の取り組みはある」と答えた。山内氏は、「生産工程で混ざっても、どれも根拠がしっかりしているシラスであるのが理想」とまとめ、最後に、「もとを正せば皆、ウナギのいち消費者なので、立場を超えて協働を」と呼びかけた。

FACILITATOR / SPEAKER

RECOMMEND