TSSS2019

P-8 空飛ぶサステナブル・シーフード:異業種をつなぐコラボレーション

P-8 空飛ぶサステナブル・シーフード:異業種をつなぐコラボレーション

シンポジウム内でも繰り返し話題に上ってきたが、サステナブル・シーフードの推進には、各分野のコラボレーションが不可欠だ。そんな業界間コラボレーションによるサステナブル・シーフード導入の話題が紹介された。イオンの協力による、日本航空機内食の認証シーフードだ。

イオン・商品戦略部 マネージャーの山本泰幸氏が、その前提となったイオンのサステナブル・シーフードへの取り組み実績を紹介し、続いて日本航・商品・サービス企画本部 開発部 機内食オペレーション室 品質管理グループの大槻妙子氏が詳細を紹介した。

 

消費者の安心のために、調達の大きな柱としてMSC・ASC認証品を導入

イオンでは1990年代から、サステナブル全般の推進に取り組んできた。その中でシーフードについても、2006年からMSC、ASCなどの国際認証品を積極的に取り入れている。

「なぜグローバルスタンダードの第三者認証にこだわるのか、よく尋ねられる」と山本氏。「答は簡単で、食の安全に加え、安心を消費者に届けるには、それがいちばん低コストで確実な方法だから。決してエコラベルをつけたいがためではない」と言う。

持続可能な水産物について、15年にわたる取り組みの中でイオンが守ってきた基本的な考え方は3つある。ひとつは「持続可能な調達基準」を重視することによって、消費者に食の安心を届けること。2つ目は、サプライチェーンの透明化により、人権問題など社会的課題に向き合う姿勢を持つこと。漁業の現場で認証を受けた水産物を、きちんとトレースフォワードすることで、あらかじめサプライチェーンの各段階での違法性を排除する。

そして3つ目は、サステナビリティについて「再生産可能か」の視点で考え、水産資源の課題に向き合うことだ。山本氏は「サステナビリティを私たちはあくまで全てのステークホルダーにとって『再生可能かどうか』どうかで考える。『持続可能か』という日本語だと、自分の経済活動が持続できることでよしとなってしまいがちだ」と述べた。これらの考え方を具現化し、裏付けていくために、MSC、ASCの第三者の評価が活用されている。

 

意を同じくする他分野とのコラボレーションへ

イオンはここ十数年で認証水産物を全都道府県の約6千店舗で販売しているが、それを可能にしているのがサプライチェーンの透明性を裏付けるCoC認証だ。これがあることで惣菜や寿司、おにぎりなどにもMSC、ASCラベルをつけることができている。

扱うMSC認証品は23魚種42品目、ASC認証品は9魚種18品目。さらに意を同じくする他業種、グループ外へもつながりを広げ、ホテル、ケータリング、レストランにも認証水産品を提供、さらにその先にあったのが日本航空の機内食だったと言う。

 

機内食もサステナブルに──認証品に経験豊かな協力者を得て

日本航空ではもともと、本業の運送事業者としての役割を果たしながら、その中でSDGsへの取り組みを進めてきた。機内食に取り組むきっかけは、1年前から一部メニューに取り入れたASIA GAP(農産物の持続可能性に向けた生産工程管理の取り組み)のフリルレタスだった、と大槻氏。その後、シーフードにも持続可能なものをという要望に対して「MSC、ASC認証品をたくさん扱っているイオンさんに相談しており、フードロスを減らすためにも、お客様に『JALの機内食は美味しい』と完食いただけるよう、サステナブル・シーフードを取り入れながら工夫していきたい」。

日本航空では他にもSDGsへの取り組みとして、プラスチック製品の使用削減なども行っている。機内やラウンジで使われるストローは紙製に、マドラーは木製や金属製に、カトラリーは金属製に、順次切り替えている。紙についても、機内誌から紙コップ、ペーパーハンドタオル、メニューカードから紙ストローまで、順次FSC認証品に替えており、2020年度には客室サービス用品をすべて切り替える目標で進めている。

サステナビリティは1分野では完結しない。品目を横断し、サプライチェーンの上流と下流をつなぐコラボレーションには、まださまざまな可能性があることを考えさせられる。

 

 

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