基調講演の最後は、水産庁の神谷崇氏が登壇。昨年70年ぶりに漁業法を改正し、大きな変革を迎えている日本の水産資源管理について解説した。
日本の漁業生産量は1984年をピークに下がり続け、40年間で6割減となっている。その理由として、規制強化によって遠洋漁業がなくなったこと、増減の激しい魚種であるマイワシの漁獲減少などがよく上げられる。しかしこれらの要因を抜きにしても下落は変わらない。沿岸域の開発や漁業者の減少を理由にする向きもあるが、根本的には、資源管理の必要があるのに、見て見ぬふりをしてきた結果であると言う。
漁業法改正の大きなポイントは、船の大きさと数を基準にした管理から、国際的に主流である、獲った魚の数量による管理への転換だ。これまで日本の漁獲全体のうち4割は漁船と漁法によって管理されていたが、それでは実際の漁獲量を管理できず、資源量の回復につながりにくいことがわかっている。
今後は数量による資源評価の魚種を現在の84種から、2023年までに200種まで増やそうとしている。これによって数量管理される量は、日本の全漁獲量の6割から8割へ増える。
またもうひとつのポイントとして、資源量評価の内容の充実を目標としている。具体的には、単に過去20年の資源推移だけを見るのではなく、本来その魚種が持っている資源のポテンシャルに対する実態の評価を行うこと。また獲り方が過剰でないか、漁業圧力という視点を加えて評価することだ。
こうした資源評価は、省庁内ではなく、独立した研究機関によってあくまで科学的に行われるべきで、これも改革の大きなポイントだと神谷氏は強調した。
資源の調査は漁業者、研究機関、行政機関が関わって多面的に行われる。その評価は科学者が独立して行う。その結果を受けて、管理目標を立てるのは行政の仕事だ。さらに関係者の声を加えて、どう漁獲するかのシナリオを描き、操業の中で管理を実施し、同時に操業の場でのモニタリングを行う。それが調査の情報としてフィードバックされる。このサイクルを回していく中で、実態を変えていく。
改正された漁業法は2020年の12月までに施行されるが、実際の運用に向けて現在、関係法令の整備が進められている最中だ。目標を明確化し、数量管理を強化し、そして資源評価の拡充・高度化によって、持続的な漁業の発展をめざしていく、と述べた。
神谷 崇
スピーカー
水産庁 資源管理部長
1985年:水産庁入庁
2006年:石川県農林水産部次長
2008年:水産庁国際課漁業交渉官
2012年:水産庁漁業調整課首席漁業調整官
2014年:水産庁資源管理部参事官
2016年:水産庁漁場資源課超
2017年:水産庁資源管理部長