シンポジウム内でも繰り返し話題に上ってきたが、サステナブル・シーフードの推進には、各分野のコラボレーションが不可欠だ。そんな業界間コラボレーションによるサステナブル・シーフード導入の話題が紹介された。イオンの協力による、日本航空機内食の認証シーフードだ。
イオン・商品戦略部 マネージャーの山本泰幸氏が、その前提となったイオンのサステナブル・シーフードへの取り組み実績を紹介し、続いて日本航・商品・サービス企画本部 開発部 機内食オペレーション室 品質管理グループの大槻妙子氏が詳細を紹介した。
イオンでは1990年代から、サステナブル全般の推進に取り組んできた。その中でシーフードについても、2006年からMSC、ASCなどの国際認証品を積極的に取り入れている。
「なぜグローバルスタンダードの第三者認証にこだわるのか、よく尋ねられる」と山本氏。「答は簡単で、食の安全に加え、安心を消費者に届けるには、それがいちばん低コストで確実な方法だから。決してエコラベルをつけたいがためではない」と言う。
持続可能な水産物について、15年にわたる取り組みの中でイオンが守ってきた基本的な考え方は3つある。ひとつは「持続可能な調達基準」を重視することによって、消費者に食の安心を届けること。2つ目は、サプライチェーンの透明化により、人権問題など社会的課題に向き合う姿勢を持つこと。漁業の現場で認証を受けた水産物を、きちんとトレースフォワードすることで、あらかじめサプライチェーンの各段階での違法性を排除する。
そして3つ目は、サステナビリティについて「再生産可能か」の視点で考え、水産資源の課題に向き合うことだ。山本氏は「サステナビリティを私たちはあくまで全てのステークホルダーにとって『再生可能かどうか』どうかで考える。『持続可能か』という日本語だと、自分の経済活動が持続できることでよしとなってしまいがちだ」と述べた。これらの考え方を具現化し、裏付けていくために、MSC、ASCの第三者の評価が活用されている。
イオンはここ十数年で認証水産物を全都道府県の約6千店舗で販売しているが、それを可能にしているのがサプライチェーンの透明性を裏付けるCoC認証だ。これがあることで惣菜や寿司、おにぎりなどにもMSC、ASCラベルをつけることができている。
扱うMSC認証品は23魚種42品目、ASC認証品は9魚種18品目。さらに意を同じくする他業種、グループ外へもつながりを広げ、ホテル、ケータリング、レストランにも認証水産品を提供、さらにその先にあったのが日本航空の機内食だったと言う。
日本航空ではもともと、本業の運送事業者としての役割を果たしながら、その中でSDGsへの取り組みを進めてきた。機内食に取り組むきっかけは、1年前から一部メニューに取り入れたASIA GAP(農産物の持続可能性に向けた生産工程管理の取り組み)のフリルレタスだった、と大槻氏。その後、シーフードにも持続可能なものをという要望に対して「MSC、ASC認証品をたくさん扱っているイオンさんに相談しており、フードロスを減らすためにも、お客様に『JALの機内食は美味しい』と完食いただけるよう、サステナブル・シーフードを取り入れながら工夫していきたい」。
日本航空では他にもSDGsへの取り組みとして、プラスチック製品の使用削減なども行っている。機内やラウンジで使われるストローは紙製に、マドラーは木製や金属製に、カトラリーは金属製に、順次切り替えている。紙についても、機内誌から紙コップ、ペーパーハンドタオル、メニューカードから紙ストローまで、順次FSC認証品に替えており、2020年度には客室サービス用品をすべて切り替える目標で進めている。
サステナビリティは1分野では完結しない。品目を横断し、サプライチェーンの上流と下流をつなぐコラボレーションには、まださまざまな可能性があることを考えさせられる。
山本 泰幸
スピーカー
イオン株式会社 商品戦略部 マネージャー
1984年ジャスコ(現イオン)入社。
輸入食品が不安視される時期に、商品開発責任者として、アジア中心にウナギ、エビ、カニや、オーガニック農産物など、食品安全の仕組みを導入しながら仕入れを実施。
2001年 環境配慮型PBグリーンアイ(水産物)規格を欧州オーガニック規準ベースに策定。
ストレスなく健康に育てることで、薬剤を一切使わない、ウナギやエビを手掛け発売。
2006年 MSC商品を1年の準備期間を経て、日本に本格的に導入。「海のエコラベル」名づけの親。
2017年 「イオン持続可能な調達基準」と「2020年目標」を策定し推進。
日本の多くの消費者が、サステナブルライフスタイル(食)を実現できるよう、持続可能な食を日本最大の小売業の現場で取り組んでいる。
大槻 妙子
スピーカー
日本航空株式会社 商品・サービス企画本部 開発部 機内食オペレーション室 品質管理グループ グループ長
1985年客室乗務員として入社
客室本部在籍中は、客室乗務員のマネジメント業務に携わる。
2017年に現在の機内食オペレーション室へ異動
主に国際線機内食の品質管理業務を担当し、世界一美味しい機内食提供を目指す。